瀬戸内寂聴現代語訳を使って、全54帖のオーディオ・ドラマになります。千年昔は紫式部が語り部となって、源氏物語が展開しました。紫式部の声は三田佳子さん、光源氏は中村橋之助さんの声という豪華な配役で、女君たちには沢口靖子、南果歩、荻野目慶子、天海祐希、中嶋朋子、牧瀬理穂、鷲尾いさ子という花も実もある今を盛りの人気女優さんたちが喜んで出演してくれています。音楽には私の大好きなツトム・ヤマシタさんが協力して下さっているし、天台声明音律研究会や雅楽の伶楽舎が参加して下さり、これ以上ない豪華人です。監督の伊藤豊英氏は、源氏物語を徹底的に読みこなされていて、見事な演出に仕立てていられます。私は三田さんと中村さんの録音を聞かせてもらいましたが、二人ともすっかり紫式部と源氏物語になりきっていて、思わず聞き惚れてしまいました。橋之助さんの光源氏は声だけでは惜しく、姿も見られたらいいのにと思ったことでした。紫式部はどう考えても美人ではなかっただろうと思います。三田さんはさしずめ藤壺の役柄でしょう。紫式部は美人ではなく頭がよく、そのくやしさから源氏物語のような大作を作り上げたのかもしれませんね。いづれにしても、源氏物語のような大長編小説を全巻読破するのは大変なことです。このオーディオ・ドラマは、源氏物語の面白さを耳から聞かせてくれるので、今の若い人たちにも親しみ易いし、活字の読みづらくなった年代の人にも便利なのではないでしょうか。千年前の物語は、すべて黙読ではなく、声に出して読まれていたようです。このオーディオ・源氏が、現代の荒々しい世相の中で千年前の優雅な王朝への夢のかけ橋となって、傷つき痛んだ現代の私たちの心の癒しになってくれることを心から願っています。